JEITA新会長が就任会見で語った「DX推進のキーワード」とは – ZDNET Japan

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、電子情報技術産業協会 会長の漆間啓氏と、AWSジャパン サービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長の小林正人氏の「明言」を紹介する。

「DX推進のキーワードは“ソフトウェア開発力”だ」
(電子情報技術産業協会 会長の漆間啓氏)

電子情報技術産業協会 会長の漆間啓氏

 電子情報技術産業協会(以下、JEITA)の新会長に6月11日付で就任した漆間氏(三菱電機 代表執行役 執行役社長 CEO)は、JEITAが同日開いた記者会見で、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のキーワードについて上記のように述べた。「ソフトウェア開発力」を強調したのが印象的だったので、明言として取り上げた。

 「前身となる2つの団体(日本電子機械工業会、日本電子工業振興協会)が統合し、2000年にJEITAが発足して今年は25周年を迎える。歴史の重みを感じつつ、会長として責務を果たしたい」

 会見でこう切り出した漆間氏は、昨今のデジタル産業の動向について、「地政学リスクや関税など、世界中で不確実性が高まっていることは言うに及ばず、これらに対抗していくためにも、日本の潜在成長率や労働生産性の低さの改善こそが喫緊の課題となる。解決のカギはデジタルにある。と言っても、単にデジタル技術を導入するだけでは足りない。DX、すなわち“デジタル”による真の“トランスフォーメーション”を社会全体で推進することが求められる」との見方を示した。

 その上で、次のように述べた。

 「DX推進のキーワードは“ソフトウェア開発力”だ。2024年12月、JEITAの調査において、モビリティー産業とデジタル技術の融合分野である“自動車のSDV化”の今後の飛躍的な伸びを予想したが、ソフトウェアの重要性が高まるのは車に限らない。いわゆる“Software Defined X”の時代に突入しつつある今、あらゆる産業においてデジタル技術を使いこなすためのソフトウェア開発力が勝負の行方を左右する」

 そうした中で、JEITAとして今後注力する取り組みを、以下のように3つ挙げた。

 1つ目は、「製造業におけるソフトウェア開発力の底上げ」だ。

 「AI、ロボティクス、量子、IoTなど、デジタル技術を活用するユーザー企業と連携し、より一段とギアを上げて、社会実装に取り組む必要がある。そのためには、大きな流れを生み出すための仕組みづくりが大切だ」と述べた漆間氏は、その1つとしてJEITAが主催する展示会「CEATEC」を挙げた。CEATECはデジタルによる価値や社会課題解決を披露する場へと大きく変貌しつつある。2024年は「ジャパンモビリティショービズウィーク」と併催したが、自動車産業に限らず、あらゆる産業のDXを加速させるための舞台としてのCEATECの価値を今後も高めていく構えだ。

 2つ目は、「サプライチェーンへの対応」だ。

 「共通の課題として、経済安全保障、サイバーセキュリティ対策、地政学リスクやサステナビリティーへの対応など、サプライチェーンを取り巻く課題が増え続けている。サプライチェーンの問題は1社だけで解決できるものではなく、複数の企業が協力し合うことが重要なことから、業界団体として積極的に取り組むべき領域であると考えている。各課題に対応した組織体制を構築し、JEITAが推進役となって、リソースやネットワークをフルに活用しながら今後も継続的に取り組んでいく」(漆間氏)

 3つ目は、「技術の進化と社会との調和」だ。

 「DXを加速させていくためには、生成AIやデータ利活用といった社会的影響の大きな技術に対して、産業界が自らルール形成に関与し、倫理と透明性を重視したガバナンスを構築していく必要があり、安心してデジタル技術を活用できる環境整備が急務だ」と述べた漆間氏は、そうしたことからJEITAとして「AIポリシー」を策定し、同日(6月11日)に公開した。その意図について「人とAIが共生する社会の実現を目指し、社会と調和したAIの普及を促進していく。JEITAは会員各社と共に、AIを積極的に利活用することで社会的価値を創出し、持続可能な社会の実現に貢献していく」と説明した(図1)。

JEITA新会長が就任会見で語った「DX推進のキーワード」とは – ZDNET Japan
(図1)JEITAが策定した「AIポリシー」サイト(出典:JEITAのサイト)

 日本としてAIとどう向き合うか。日本企業はAIをどう活用すべきか。そうした論議においては、グローバルとは異なる日本ならではの考え方やアクションも必要になってくるのではないか。JEITAにはぜひそうした論議をリードする役目を果たしてもらいたい。

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