FRB利下げで労働市場下支えに転換へ-会合直前に異例の政治劇展開 – Bloomberg

米金融当局者は17日まで開く連邦公開市場委員会(FOMC)会合で政策金利引き下げの決定を下し、失速しつつある労働市場の下支えに動く見通しだ。

  トランプ大統領の関税措置がインフレ高進につながると懸念し、今年に入り金利据え置きを続けてきた金融当局にとって、軸足の転換を意味する。

  トランプ氏は自身の利下げ注文に応じない金融当局に対し執拗(しつよう)に圧力をかけ続け、14日にも「大幅な利下げがあると思う。利下げにはうってつけの状況だ」と述べていた。

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  さらに15日には、トランプ氏がFRB理事に指名したマイラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長について、上院が理事就任を承認。一方、トランプ氏が解任を目指すクックFRB理事を巡り、同理事が解任の無効を訴える訴訟が進行している間は解任を差し止めるとした下級審の判断を連邦高裁が支持するという、政治ドラマが繰り広げられた。

  こうした展開はさておき、今後数カ月先の金利の道筋の手掛かりを求め、投資家はパウエルFRB議長の記者会見と、金融当局者による最新の四半期経済予測を注視するものと見込まれる。

  金利決定を記すFOMC声明と、金利予測分布図(ドット・プロット)を盛り込んだ四半期経済予測は米東部時間17日午後2時(日本時間18日午前3時)に発表され、2時半からパウエル議長が記者会見する。

  FRBウオッチャーは、雇用情勢やインフレを巡り金融当局者の間に見解の相違がある点を踏まえ、積極的なペースでの利下げ方針が示されることはないと予想している。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)の米国担当シニアエコノミスト、アディティア・バーベ氏は「労働市場に持続的な悪化の兆候が見られない限り、それぞれの利下げは前回のものよりも一段と困難になる」との見方を示した。

投票者の顔触れ

  FRBウオッチャーの多くにとって、FOMCの金利決定が主要な関心事であるのは確かだ。ただ今回の場合、16日からの2日間の会合の直前に、投票を行うメンバーの顔触れがどうなるか異例のドラマが展開され、それが金融当局に関するニュースの中心的な話題となった。

  マイラン氏は16日午前、理事会メンバーとして就任宣誓を行い、早速FOMC会合に出席することになった。マイラン氏はCEA委員長のポストにとどまる方針で、これには批判が噴出。マイラン氏は理事の任期中、CEAの職務を無給休職とするが、FRBで独立して行動するとの同氏の約束に疑問の声が上がっている。

  一方、ワシントンの連邦高裁判事はクック氏について、当面は職務を継続できるとの判断を賛成2、反対1で下した。クック氏は先月、住宅ローン不正の疑いを理由に自身を解任しようとしたとして、トランプ氏を相手取り提訴。これに対しトランプ政権は解任を認めるよう連邦最高裁に申し立てる意向だ。

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  ネーションワイド・ミューチュアル・インシュアランスのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏は、FOMC会合での投票者の正確な顔触れや、クック氏が最終的にFRBにとどまることができるかどうかは、今後数カ月の金利の道筋を有意に変える公算は小さいとみる。

  ただし、トランプ氏がクック氏を解任した上で、自身の息のかかった後任を起用することに成功すれば、金利の長期的な軌道に影響を及ぼすことになると考えられる。

  トランプ氏はこのほか、来年5月に任期満了となるパウエル議長の後任を指名する機会を持つ。先月に急きょ辞任したクーグラー前理事の後任として、マイラン氏の任期は来年1月末までの予定だが、一段と長期のポストに再任される可能性や、トランプ氏が後任を指名するまでFRBにとどまることも想定される。

  パウエル議長は記者会見で、これら一連の動きや、それがホワイトハウスからの連邦準備制度の独立性を脅かすかどうかについて、質問を受ける可能性が高い。

予想される反対票

  FRBウオッチャーの間では、予想される0.25ポイントの利下げを巡って、一層大幅な利下げを支持する金融当局者と、金利据え置きを支持する当局者の双方から異論が示される可能性があるとみられている。

  こうした意見の相違は全て、当局者が労働市場の急激な悪化を一段と懸念しているのか、それとも主にトランプ関税によってインフレが加速する可能性を警戒しているのかという点に集約される。

  いずれもトランプ政権1期目に起用されたウォラーFRB理事とボウマン副議長(銀行監督担当)の2人は労働市場への懸念を理由に挙げて、7月の金利据え置き決定に反対票を投じた。

  その後発表されたデータでは、雇用の伸びが急激に鈍化していることが示されており、景気悪化の可能性に対する懸念が広がっている。それと同時に、インフレ率は当局目標の2%を引き続き上回っているものの、関税が最終価格に与える影響は当初の懸念ほど大きくなかったとボストジャンシク氏は話した。

  今回の会合で3人以上の当局者が反対票を投じれば、2019年9月以来となる。

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