高市首相はなぜ「推し」になったのか?衆院選で政治動画28億回…SNSがつくる「ファンダム政治」、熱狂の裏側とは 【やさしく解説】ファンダム政治(1/5) | JBpress (ジェイビープレス)

高市首相はなぜ「推し」になったのか?衆院選で政治動画28億回…SNSがつくる「ファンダム政治」、熱狂の裏側とは 【やさしく解説】ファンダム政治(1/5) | JBpress (ジェイビープレス)2月の衆院選で高市首相を「推す」支持者(写真:つのだよしお/アフロ)

 今から半年ほど前の2026年2月。衆院選を前に、人々のスマートフォンには、高市早苗首相の動画が次々と流れ込んできました。海外首脳と笑顔で向き合い、反対意見には歯切れよく反論する。そして「日本列島を、強く豊かに」と訴える——。多くは字幕や音楽を加えた数十秒の短尺動画でした。

「選挙ドットコム」の調査によると、衆院選関連の動画は実に約9万本、総視聴数は約28億回。それらの総視聴数のうち、政党公式の動画が12.0%、議員・候補者本人の動画が4.2%。これに対し、第三者による動画は83.8%を占めました。そこには、支持者だけでなく、広告収益を求める制作者、影響力を広げたいインフルエンサー、批判を繰り返す反対派も含まれています。

 いまや政治家のイメージは、本人や政党だけがつくるものではありません。支持者と批判者、動画制作者、プラットフォームがSNS上で「主人公」を作り上げ、その物語が支持と反発を生みます。政治家を「推す」行為に象徴されるファンダム政治は、政治的感情を再生数や収益へ変える市場を生みました。こうした状況をどう読み解けばいいのでしょうか。「誰を推すか」ではなく、「誰が、どのように推させているのか」を見渡しながら、「ファンダム政治」の構造と問題点をやさしく解説します。

「ファンダム」とは何か

 ファンダム(fandom)とは、英語のfanと、領域や共同体を表す接尾辞-domを組み合わせた言葉です。fanの語源は、狂信者や度を越して熱中する人々を指す英語の「fanatic(ファナティック)」の短縮形。従って、ファンダムという言葉自体は、「熱狂的な人々の世界」「特定の人やモノなどの熱狂的支持者がつくる共同体」を意味します。


 そこに集うファンは、対象について詳しく調べ、仲間と情報を交換します。なかには、名場面を選び、画像や動画を制作する人もいます。愛称や決まり文句、グッズ、応援歌などを共有し、対象の魅力を自分たちの言葉で説明します。対象を消費するだけでなく、その意味や物語を再生産するのです。

 その行動様式が政治へ入ったのが、ファンダム政治です。

図表:フロントラインプレス作成

 支持者は候補者の演説を聞いて投票するだけではありません。国会答弁を切り抜き、政策を図解し、画像に言葉を添え、批判的な投稿に対しては反論・否定を繰り返します。政治家や政党が発信した広報を共有するだけでなく、自分で新しい政治コンテンツを作る。政治広報の受け手だった有権者が、メディア(情報の運び役)になって広報の担い手になっていくのです。


 政治家に好感を持つことや、選挙運動を手伝うことは昔からありました。そうした状況と現在との違いは、一人の支持者が作った動画を、SNSが数十万、数百万人へ届け得ることです。後援会や政党支部へ入らなくても、スマートフォン一台で全国的な選挙運動に参加できます。