宗教法人は政治家の裏財布:日本版スーパーPAC – INSIGHT NOW!プロフェッショナル
/米国もやっているし、民主主義の政治活動とは、そういうものだろう、などと言うなかれ。ためしに、資金源を締め上げてみろ。蜘蛛の子を散らすように、だれもいなくなる。弱者や困窮者、少数者への思いやりを忘れ、お友だちの仲間内だけで利権分配ばかりやっていれば、ジェンガのように民主主義が枠組から崩れる。/
政党や後援会などは、「政治団体」として、政治資金規正法の対象であり、寄附授受制限と収支報告義務がある。すなわち、その総量や出処(企業や組合、外国人)などが報告書でチェックされることになる。しかるに、「寄附」というのは、法律上は「金銭その他の財産」(有斐閣『法律用語辞典』第三版)に限られ、ボランティアやサービスのような労務を含まない。しかし、実際のところ、選挙などの政治活動の支出で最大のものは「人件費」であり、これを外部組織、とくに「公益事業」しか行っていない(ことになっていて収支計算書の義務が無い)宗教法人などが「ボランティア」として丸抱えすれば、アジャ、パー! と見えなくなる。 この絵図は、米国でも大きな問題になっている。米国の場合、政党や政治家に対する寄附は、個人も金額制限され、企業や組合に至っては全面禁止されている。その一方、社会問題や文化問題、環境問題など、政党や政治家とは直接関係の無い「政治行動委員会(Politocal Action Comittee、PAC)」は、自由な寄附集めと活動支援が認められている。そこで、特定事業だけのためのスーパーPACが業界ごとに設立され、大統領選挙キャンペーンなどの寄附を無制限にプールして政治活動に投入する方法が考え出された。スーパーPACは、政党や政治家と直接に接触してはならない。しかし、特定候補の主張を補強する活動や広告、とくに敵対候補を非難攻撃する大量のネガティヴ広告を得意とする。 昨今の宗教法人など、信者の数は知れたもの。そんな程度で政治家が当選したりしない、などという話は目眩まし。また、政党や政治家が関係を断てばいい、などという簡単な話でもない。重要なのは、不特定多数の信者や、そこにプールされた莫大な資金と人脈、利権で調達された人員、買収された著名人が、むしろ表向きの政党や後援会とは独立に、組織立って特定の候補者や政策を応援し、また敵対者を非難口撃すべく、ネットやマスコミで世論誘導を行うこと。いわゆる「陰謀」だが、あたおかな「陰謀論」としてかたづけられないほど、もはや現実味を帯びている。 これは、組織の身元を明らかにして意見広告を行う米国のスーパーPACより、タチが悪い。それも、困ったことに、工作に利用されて暗躍する本人たちは、大元に洗脳操作されているなどとはツユも疑わず、善意と信念に溢れている。食事会だの、園遊会だの、講演会だのに誘われ、破格の待遇でもてなされ、仲間内で話を合わせているうちに、本気でそう思うようになり、批判は嫉妬だ、陰謀論だ、などと言いだし、どこがおかしいのかもわからなくなってしまう。いっそ米国のように、ただカネ儲けの仕事としてやっているという選挙傭兵連中のほうが、また理性を保っているだろう。 でも米国もやっているし、民主主義の政治活動とは、そういうものだろう、などと言うなかれ。ためしに、資金源を締め上げてみろ。蜘蛛の子を散らすように、だれもいなくなる。弱者や困窮者、少数者への思いやりを忘れ、お友だちの仲間内だけで利権分配ばかりやっていれば、ジェンガのように民主主義が枠組から崩れる。そして、そこから鬼が入り込む。
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純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。
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「防衛庁元技官はなぜ中国スパイの手に落ちたか」霞が関や日本企業から情報を盗んだ”巧妙な手口” 狙われるのは「軍事や政治の機密情報」だけではなくなった | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
経済安全保障はなぜ重要とされているのか。元国家安全保障局長の北村滋さんは「外国の情報機関が軍事・政治の機密情報のみを入手しようとしていたのは過去の話だ。今は先端技術にその矛先が向けられている」という――。
※本稿は、北村滋、大藪剛史(聞き手・構成)『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです
防衛庁元技官による潜水艦情報流出事件
――武器や装備品の素材情報が盗まれた事件はあったか。
2000年に、防衛庁(現防衛省)の元技官が潜水艦に関する資料を中国側に渡していた事件もあった。
この元技官は1971年に防衛庁に入庁し、技術研究本部(防衛装備庁の前身)で潜水艦を造る鉄鋼材料の強度向上の研究などを担当していた。2002年、同本部第一研究所の主任研究官で定年退職した。資料を持ち出したのは在職中の00年2~3月ごろのことで、潜水艦の船体に使われる「高張力鋼」と呼ばれる特殊鋼材やその加工に関する技術報告書をコピーし、無断で持ち出していた。資料はB5版で34ページくらいの厚さだった。
――高張力鋼とは。
通常の鋼板より薄くしても、強い負荷に耐えられる特殊な鋼板だ。海上自衛隊のおやしお型潜水艦に使われていた。日本の潜水艦技術、とりわけ特殊鋼材に関する技術は世界屈指のレベルと言われていた。
高張力鋼情報の漏洩は、潜水艦の潜航深度や、魚雷からの攻撃でどの程度破壊されるかといった弱点を教えるばかりか、「敵」の潜水艦建造に利用してください、と言っているようなものだ。わが国への脅威は増すばかりだ。
食品輸入業者を装ったスパイだった
元技官は同本部の研究所で、特殊鋼材の原料や耐弾強度などの研究に従事していたという。持ち出したのは、元技官が1990年代後半に高張力鋼の材質や溶接方法などについて同僚と共同執筆した論文などのコピーだった。
警視庁は2007年2月、資料を持ち出した窃盗容疑で元技官を書類送検した。直接の容疑は窃盗だが、その資料は中国に渡っていたとみられる。単なる窃盗事件ではなく、中国によるスパイ事件だった。
――元技官は誰に資料を渡していたのか。
知人である埼玉県の食品輸入業者だ。桃の缶詰などを中国から輸入していた経験があるという業者は03年ごろから、在日中国大使館の元副武官が来日した際、車で送迎していた。04年までの約10年間に約30回も中国に渡航した事実を警視庁は確認していた。中国では、「軍関係者」として紹介された男性と会っていた。要はこの業者は、中国のスパイだったわけだ。
業者は、固形燃料の納品などで防衛庁に出入りしたのをきっかけに人脈を広げた。元技官とは1986~87年ごろ、共通の知人の紹介で知り合ったという。業者は防衛庁関係者に幅広く接触しながら、集めた情報を中国側に流していたのだろう。
元技官は、「東京都や神奈川県で週1回から月1回ペースで会食していた。代金は相手方が払った」と供述していた。一緒に酒を飲むうちに、業者から「資料を持っていかないと、中国で仕事ができない」と潜水艦に関する資料の提供を求められたようだ。元技官は「渡した資料は、中国側に渡ると思っていた」と認めている。実際、情報は業者を通じて中国側に渡ったのだろう。
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参議院議員の石崎聖子さん、さて誰でしょう? 政治団体の収支報告書から「旧姓使用」を考える:東京新聞 TOKYO Web
戸籍名を記載している議員の収支報告書。上段が山谷えり子氏、2段目右が森まさこ氏、同左が丸川珠代氏、3段目右が蓮舫氏、同左が橋本聖子氏=一部画像処理
国会議員らが代表を務める政党支部などの政治団体。その収支報告書の代表者名は、ほとんどが「戸籍名」で記載されている。だが、旧姓で政治活動する女性議員らは少なくなく、なじみのない戸籍名での表記だとわかりにくい一面もある。今後、女性議員が増えると見込まれる中で、少なからぬ混乱を生まないか。選択的夫婦別姓制度導入に向けた議論も進む。収支報告書から、「旧姓使用」を考えた。(特別報道部・木原育子)
◆普段は旧姓、見慣れない戸籍名 総務省は「選管に任せている」
講演する橋本聖子・東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会会長(参議院議員)=2021年11月
1日、JR新橋駅周辺。石崎聖子さん、小川恵里子さん、大塚珠代さん、三好雅子さんの名前をノートに書き、行き交うサラリーマンら20人に「突然ですが、この人を知っていますか」と尋ねてみた。
営業途中に駅に立ち寄ったシステムエンジニアの男性(31)は、「う~ん…」と数秒の間の後、「アイドルって感じの名前ではなさそう。往年の女優さん?」。
喫煙所にいた飲食店勤務の男性(32)は、「昔つきあってた子に、聖子って名前の子がいたな」と遠くを見つめた。銀行で用事を済ませて会社に戻る途中だったという事務員の女性(47)は「見当もつかない。一体、この人たち誰?」。
この日、男女計20人に同様の質問をしたが、正解した人はゼロだった。この4人に加えて、「斉藤蓮舫さん」を加えると、20人のうち2人が正解した。
この女性たちは参議院議員だ。橋本聖子議員、山谷えり子議員、丸川珠代議員、森まさこ議員、蓮舫議員の戸籍名。閣僚や閣僚経験のある女性政治家で現役の国会議員は現在19人いるが、この5人は結婚するなどして戸籍名と政治家としての活動名が違う。閣僚経験のない議員を含めれば、もっとあるだろう。
この5議員が、代表を務める政治団体の収支報告書代表者欄には、見慣れない戸籍名が記されている。
総務省に聞くと、収支公開室の担当者は「実質的な審査権はなく、届け出されているものを受理するだけ。政治資金規正法上の規定も設けられていない。各選管に任せている」。
◆収支報告書にどう記載するか、厳格な定めなく…
そこで3月下旬、「代表者名の記入欄はどのような規定になっているか」と、47都道府県選管に質問文書を送った。結果は、33都道府県が「戸籍名」での記載を求めていたものの、その理由はさまざま。
最多の24道県が答えたのは、「政治団体の設立届に記載された代表者名の記入を求めている」というもの。設立届の代表者は、戸籍上の氏名の記載が必須なため、必然的に収支報告書の代表者名も戸籍名になるということだ。
三好雅子の名で福島県選管に「県参議院選挙区第4支部」の報告書を提出した森まさこ議員は、「通称名やペンネームではなく、必ず戸籍上の氏名を記載してくださいと(県選管の)注意事項にある」と文書で回答。山谷議員の事務所も「東京都選管は戸籍名での提出を求めている」と答えた。橋本、丸川両議員も同様の答えだった。
だが実は、政治資金規正法上、収支報告書に代表者の氏名をどう記載するか、については厳格な定めはない。「設立時に戸籍を確認しているものではない」(福井)、「整合性のみを確認している」(広島)と言葉を足した選管も多かった。
そのほか、「法に基づいて行う各種の届け出は全て、『戸籍名』を用いて行うことが原則だ」(山梨)、「通例、氏名は戸籍名と認識している」(兵庫)と戸籍法に基づく意見もあった。 この「旧姓使用」、何が問題かというと、政治資金の流れをチェックする際に分かりにくいことだ。
中東からの難民がベラルーシ経由でポーランド国境に殺到 EUは猛反発「難民を政治利用」:東京新聞 TOKYO Web
8日、ベラルーシとポーランドの国境に集まった難民ら=タス・共同
【モスクワ=小柳悠志、パリ=谷悠己】旧ソ連ベラルーシのポーランド国境に中東からの難民が大量に押し寄せ、侵入を阻もうと周辺を封鎖するポーランド当局との間で状況が緊迫している。8日には約3000人の難民が国境に集結したもようだ。欧州連合(EU)はべラルーシ当局が意図的にEU加盟国に難民を送り込んでいると批判しており、対立が激化する一方だ。
ポーランド国防省は同日、ベラルーシとの国境に難民が集結し、ポーランドへの入国を試みているとツイッターで発表。同時に「難民の背後にベラルーシ当局がいる」と指摘した。
モラウィエツキ首相も9日、自身のツイッターに「国境を守ることは私たちの国益でもあるが、今やEU全体の治安がかかっている」と投稿した。
一方、タス通信によるとベラルーシ国境警備隊は移送への関与を否定した。
EU加盟国の国境には、この夏からベラルーシ経由でイラクなどの難民が押し寄せている。リトアニアへの不法入国者は例年の20倍以上に達した。欧米から国内の人権弾圧で非難されるベラルーシのルカシェンコ大統領は、難民移送でEUを混乱させる狙いとみられている。ベラルーシと連合国家を組むロシアは国営放送が「難民受け入れを渋っている」と報じるなどEUを批判している。
EUのフォンデアライエン欧州委員長は8日、声明を発表し、「ベラルーシ当局による難民の政治利用は受け入れられない」と非難した。
声明では加盟国にベラルーシへの追加制裁を呼び掛けたほか、同国内に到着する難民の出身国などの第3国に対しても、航空会社などへの制裁を検討する考えを示唆した。EUは法の支配を巡ってポーランドと対立しているが、フォンデアライエン氏は制裁策を巡ってモラウィエツキ氏と協議したことも明らかにした。
欧州メディアによると、ポーランド議会は先月末、難民流入を防ぐためベラルーシ国境に壁を建設する政府案を承認。EUに資金援助を求めているが、フォンデアライエン氏は人道面への配慮から資金拠出を拒否する考えを示している。
サーフボード製造の危機!?アメリカ市場において政治問題に巻き込まれたボード原料 | THE SURF NEWS「サーフニュース」
Photo: WSL / UNKNOWN
News
2021/09/05
World Surf Movies
サーフボードを製造する上で欠かす事のできない主な材料となるのが、フォームブランクスに始まり、フォームをラミネートするためのグラスファイバー(ガラス繊維)とレジン(樹脂)。
上記の3つの内、1つでも欠けると製造工程が滞る事になり、私の記憶にある中では過去にフォームブランクスが2005年に枯渇した事がありました。
理由としては当時のフォーム業界において、アメリカ国内のシェアが約9割、世界シェアが6割あったクラークフォームが突如として閉鎖したためです(原因については明かされず)。
当時としては衝撃的なニュースでしたが、結果的に見ればPUフォーム一辺倒だったフォーム業界においてEPSフォームなど多様性が広がる結果となりましたが。
今回問題となっているのは、アメリカにおけるグラスファイバー不足及び値段の高騰であり、問題の引き金となったのはアメリカと中国による政治的な駆け引きとBloombergが報じました。
以前のアメリカはグラスファイバーの大半を中国からの安価な輸入品に頼っていました。
そんな中、2018年にトランプ政権であったアメリカが中国への経済制裁として、輸入グラスファイバーやレジンに対する関税を25%引き上げることに。
当然、中国も黙っている事はなく報復措置に動き、グラスファイバー製造者たちは商品の供給を輸出ではなく国内市場へと転換し、輸出価格を吊り上げる政策を取りました。
国内市場における供給としては、風力発電向けの風車の羽根を製造するためのグラスファイバー使用などにプライオリティをシフトさせたとのこと。
そのような政治の駆け引きに加え、新型コロナウイルスのパンデミックにより世界的にグラスファイバーを使ったプールやボート製造などといった娯楽向けの需要が減少し、コロナ倒産する中国の工場もあり、グラスファイバーの全体的な量自体が減少。
このような事態に見舞われ、南カリフォルニアを拠点とするサーフボードブランドAIPA SURFのデューク・アイパは「大惨事」と口にするほど深刻な問題となっているそうです。
量自体が減ればグラスファイバー確保が容易ではない事から、サーフボードオーダーの納期が延びることにも直結し、Surf Hardware Internationalのリージョナルマネージャーは「以前は最短で6週間だった納期が6カ月になった」とBloombergに伝えています。
中国からの輸入品に期待できないのならば、打開策としては東南アジアで関税の高くない国から輸入すれば良いのですが、どうしても従来の値段よりも跳ね上がるそうです。
概算としてデューク・アイパによると「これまで750ドルだったサーフボードが1,000ドル近くになると思う」とのこと。
果たして、アメリカ国内におけるサーフボード価格が大幅な値上げに動くのか、はたまた知恵と工夫で現状維持する事になるのか今後の動きに注目です。
(World Surf Movies)
参照記事:Surfers, swimmers, boaters run into summer-disrupting shortage|Bloomberg
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習近平氏「社会主義以外の政治は失敗」 民主化拒む強硬姿勢鮮明<中国共産党100年式典>:東京新聞 TOKYO Web
中国共産党の習近平総書記(国家主席)は1日の党創建100年式典での演説で、「歴史と人民が中国共産党を選んだ」と一党独裁を正当化し、「中華民族の偉大な復興の実現は不可逆的な歴史プロセスに入った」と訴えた。強権統治に対する欧米からの批判を意識した発言も目立ち、世界は今後、一層強大化する中国と向き合う。(北京・中沢穣)
中国共産党100年式典で、胡錦濤前国家主席の左に並び手を振る習近平国家主席=Ng Han Guan氏撮影(AP)
◆民族の夢
習氏は演説で「中華民族の偉大な復興」という自身の掲げるスローガンを21回も使い、「党の輝かしい歩み」を振り返った。
「1840年のアヘン戦争以来、中国は半植民地となり、この時から中華民族の偉大な復興が最大の夢となった」と説き起こし、「衣食に事欠く状態から、小康(ややゆとりのある)社会を実現させた」と、鄧小平以来の悲願だった目標の実現を誇った。
19世紀までさかのぼる「復興」の物語は、愛国心を高揚させ、党への求心力を高める狙いもある。習政権の肝いりで新設された「中国共産党歴史展覧館」は、清朝時代の離宮「円明園」の模型から展示を始める。北京郊外の円明園には1860年に英仏連合軍に破壊された建物の跡が、侵略の象徴として残されている。習氏は「中華民族が侮辱を受けていた時代には二度と戻らない」と力説した。
◆7万人の拍手
「中華民族の偉大な復興の総設計士」「危機にある世界に曙光をもたらした」。6月末に記者会見した党幹部は、習氏が国外からこんな称賛を浴びていると持ち上げた。国内でも、来年秋の党大会以降の続投も視野に入れる習氏の賛美であふれる。
しかし建国の父、毛沢東や、改革開放を主導した鄧小平に比べて目立った実績はない。加えて人権問題や強権的な統治を巡り欧米からの批判が強まるなど国際環境は厳しい。
演説では習氏が対外的な強硬姿勢を口にするたび、天安門広場に集まった7万人の拍手や歓声は大きくなった。特に台湾統一は「中国共産党の歴史的任務だ」と言い切った時は歓声も最高潮に。習氏は対外的な脅威を強調することで、自らの求心力に結び付けたい考えも透ける。
◆タブー触れず
一方、習氏は数千万人の犠牲者を出したとされる大躍進や文化大革命、民主化運動を武力弾圧した天安門事件など負の歴史はもとより、少子化や経済成長の鈍化など今後の課題には言及しなかった。
さらに創建80周年での江沢民総書記(当時)と、90周年での胡錦濤総書記(同)がいずれも言及した「政治体制の改革」にも一切触れなかった。
習氏は社会主義以外の政治運動は中国ではすべて失敗したと総括し、「(国外からの)教師面した説教は受け入れない」と欧米の民主主義を拒む考えを鮮明にした。胡前政権までは民主的な制度の導入を含む「政治制度改革」が党内でも議論されていたが、習政権の発足後は「話題にすらできないタブー」(党関係者)となっている。